光のもとでⅠ
「蒼樹、ハーブの香りとはいえ、シャンプーの香りと海鮮鍋の匂いよ?」
「あぁ、母さんに一票。ふたつが混ざって美味しそうな匂いには思えない」
「えっ、ふたりともそっちっ!? いや、俺は純粋にハーブの香りをだねっ!?」
 私とお父さんは、慌てる唯兄をクスクスと笑って見ていた。
 そんな家族の団らんに心が和む。
 とくにお父さんがいるのは久しぶりのことで、お父さんのにこにこと笑う顔がとても新鮮に思えた。
 家族といる空気は心底ほっとできる。
 何も考えず、自分をニュートラルな状態に保てる感じ。
 そんな夕飯が済むとお父さんに声をかけられた。
「翠葉、外に出ようか」
「外……?」
「うん、ベランダの北側に広いスペースがあるの知ってるか?」
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