光のもとでⅠ
 桃華は高校一年生で俺は院生。
 年の差は秋斗先輩と翠葉とほとんど変わらない。
 うろたえる翠葉を散々見てきたのだから、このくらいは考慮してしかるべきだった。
「カードケース……すごく嬉しくて、使おうと思ってたんです。でも、佐野も翠葉も同じものを持っていて、どうやっても蒼樹さんからいただいたものってわかっちゃうし……」
「……嫌だった?」
「そうじゃないんです……。ただ、言うのが恥ずかしいっていうか……」
 見る見るうちに桃華の白い肌が赤く染まっていく。
「嬉しくてもそれを人に話すのが恥ずかしくて――こんなこと初めてで……。本当は校内巡回が始まったらさりげなく、普通にカードケースを使うつもりだったんです。でも、教室出たら蒼樹さんがいるし、佐野がカードケースの話題にするし……」
 なるほど……タイミングを逃がしちゃったってところかな?
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