光のもとでⅠ
 昇降機の準備が整い、ほかのステージからもスタンバイOKの連絡が入る。
 朝陽が会長にスタンバイOKの旨を伝えると、次は放送委員が動いた。
「モニター音出します! 打ち合わせどおり、カウント八拍目で演奏スタート。同時に昇降機を上げてください」
 放送委員の声が響き、カウントが終わると同時に温度ある音が走りだした。
 俺が握る翠の左手は、冷たすぎることも熱すぎることもなく、表情も落ち着いたものだった。
 持ち直した、と安心する。
 昇降機を降りるとフリースペースへ移動し、続々と上がってくる人間を迎えては握手を交わす。
 翠のもとには女子しか寄って来ない代わりに、俺のところへ来るのは「同情」がうかがえる顔をした男ばかり。
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