光のもとでⅠ
 エレベーターに乗り込み九階で降り、ゲストルームへ向かいながら思う。
 これじゃ昼間の移動のときと何も変わらない。むしろ、今のほうがひどい気がする。
 部屋に着いたら蒼樹と若槻を締め出してキス攻めだ……。
 それで済めばいいけど、正直自信がない。
 胸もとにキスマークでもつけようか。それとも、自分の視界に必ず入る鎖骨の上とか……。
 この際、誰に見られるとかどうでも良くなってきていた。
 彼女の使っている部屋で待っていると、
「秋斗先輩はあっち」
「秋斗さんしばらく立ち入り禁止」
 蒼樹と若槻に追い出された。
 この付け焼刃兄妹がっ……。
「ほぉ……人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られるって知ってるか?」
 言うと、
「兄妹って馬に蹴られるほうが痛いと思うよ」
 と、にこりと笑った若槻に一蹴された。
 で、リビングに行くでもなくその場にしゃがみこんでいる俺はどうしたらいいものか。
 翠葉ちゃん、俺のこと好きなんだろ? それなら全部俺に任せてよ。
 警戒なんてしてほしくないんだけどな……。
 ……いっそ彼女のすべてを奪ってしまおうか。
 いやいやいやいや、それ犯罪だし。
 でも、怖いことじゃないと教えるにはどうしたらいい?
 そんなことすらがわからない。
 女なんて飽きるほど抱いてきた。たいていの女なら快感へと誘う自信もある。でも、初めての子を相手にレクチャーするのは俺が初めてで、楽しみだと思っていたことが今となってはどうしたらいいのかさっぱりだ。
 身体でわからせたい。そう思う自分の強欲さが募るばかり。
 俺、どうしたらいい? このままだと、明日には彼女を襲ってしまいそうだ――。
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