光のもとでⅠ
「いや、俺が速く歩きすぎた」
 身体を支えたまま木の根元に腰を下ろすと、翠は俺の立て膝の間に座る形になる。
 本人は預けたくて預けているわけではないだろうが、俺は自分にかかる体重を心地いいと感じていた。
 重いとか軽いとか、そんなことはどうでもよく、ただ「ここに在る」という事実に心が落ち着く。
 眩暈が治まったのか、翠はゆっくりと木を見上げた。
 少しすると視線を移動させ、垣根の向こうに見えるジャックオウランタンを見ているようだった。
 翠の目にはジャックオウランタンの光がゆらゆらと映っていた。
「もう十一月になっちゃうのね」
「あぁ……。明日からは十一月だ」
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