光のもとでⅠ
 それでも足を止めるわけにはいかなかった。
 木田さんは電車に乗ったままだろうか。
 それとも、この駅で降りたのだろうか。
 不安に押しつぶされそうになりながらエレベーター乗り場に着くと、すでに乗客を上で降ろして戻ってきたエレベーターが開いたところだった。
 仮に同じ駅にいたとして、このままでは木田さんに追いつけない。
 木田さんに会えない――。
 そのとき、ポケットの中で震える携帯にはっとした。
「……携帯」
 以前、木田さんからいただいた名刺は今日いただいた名刺と同じカードケースに入っている。
 それには携帯の番号も記載されていたはずだ。
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