光のもとでⅠ
「記憶の話を続けるために十階へ行ったのを覚えていますか?」
「えぇ……覚えているわ」
「そのとき、藤原さんが教えてくれました。私が最後に口にした言葉を」
「……最後に話したこと?」
「――湊先生や秋斗さんたちものすごく仲が良くて……ツカサとだって仲が良かったのに、どうしてこんな――私が、私が。……これが私が記憶をなくす直前に口にした言葉です。そして、これが本当の理由。自分の取った行動ひとつで仲の良かった人たちがギクシャクしだす。その現実に耐えられなかった。自分が入院しなければ、自分がいなければ――そう思うくらいには耐えられなかったんです。だから、秋斗さんのせいじゃない。誰よりもひどいのは秋斗さんじゃなくて私です。だから――」
 話の途中で栞さんにぎゅ、と抱きしめられた。
「何も知らなくてごめんね」
 それは違う。
< 7,356 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop