光のもとでⅠ
「私、今いっぱいいっぱいみたいで……。学校に通うこと、勉強についていくこと、恋愛のこと、体のこと。全部抱えられなくて、なんか気持ち悪いくらいに頭の中がぐちゃぐちゃなんです……」
「うん、そうよね。色々と一気にありすぎたわよね」
 そう肩口で栞さんの柔らかい鈴を転がしたような声がする。それは癒しの音色に思えた。
「でも……一番に優先したいものはわかってるんです。学校と体調……それだけはどうしても譲れない部分で……。秋斗さんのこと好きだと思ったけど、その気持ちは嘘じゃないんだけど、どうしても……今はそれを許容できる場所がないみたいです。その気持ちを手放すのは私の身勝手ですよね……」
 栞さんからの返答はなかった。
 それは、肯定を意味するのだろうか。
「翠葉ちゃん、人は誰だって自分がかわいいの。それが当たり前なの。最後に優先するのは自分のことでいいの。だから、自分の中で優先事項が決まっているのならば、それに従うのは悪いことじゃないわ。それすらも理解してくれないような相手なら願い下げって言ってやんなさい」
 美波さんの言葉はとても重いものだった。
 自分がかわいくて当たり前――本当にそれでいいの?
 今まで何度となく私を助けてくれた秋斗さん相手にしていいことなの?
 秋斗さんが私を大切に想ってくれているのは痛いほど伝わってくる。でも、それを受け止められない自分が、自分が自分を嫌悪するほどにつらい。
 なのに、理解してくれない人は願い下げって、そんな理不尽なことをしていいのかな……。
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