光のもとでⅠ
 背骨に添って丁寧に丁寧に指圧を加えられる。少しくすぐったくなることがあって、堪えるのが大変だった。
「翠……笑ってたりする?」
 こちらをうかがうようにして訊かれる。
「だって、くすぐったいっ!」
「じゃ、もうすこし強く押す」
 突如加えられた力に、
「痛いっ」
「……注文が多い人間のマッサージはやりたくない」
 と、吐き捨てられた。
 けれども、そのあとの指圧は加減がちょうど良く、くすぐったくも痛くもなかった。
 腰と背中、頭と二十分くらいずつで施術してくれた。
「先輩……お医者様じゃなくていますぐにでもマッサージ師になれそうですね?」
「それはどうも……」
「手、疲れませんか?」
「あぁ、適当に疲れてる」
「あのっ、私、手の平のマッサージだけは得意なの。終わったらやらせてくださいっ」
「…………」
 先輩は急に黙りこくった。
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