光のもとでⅠ
 佐々木という男は藤宮一族の人間ではない。
 配偶者が藤宮の人間というわけでもない。
 それが五十歳半ばで専務という役職に就いたのだから、仕事はそれなりにできたのだろう。
 上からの信頼もそこそこあったはずだ。
 しかし、力を持った途端に人が変わる輩もいる。
 佐々木はその典型だった。
 権力にものを言わせ、親戚縁者の雇用や自分に都合のいい人間の異動、人事にも口を出していたという。
 気に入られた部下にとっては良い上司でも、自分の気に入らない部下に対してはパワハラが顕著だったらしい。
 彼の下についた社員は、パワハラが原因でうつ病になり、長期傷病休暇から現場復帰できずに退職する人間が多くいたという。
「派閥」とまではいかないものの、佐々木に組する人間たちで構成された一組織があったことは確認済み。
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