光のもとでⅠ
 ほとんどが警備会社側の問題であり、関係する人間がいるとしたら秋兄くらいなものだと思った。が、少し違った。
 俺にも火の粉が降りかかる可能性が含まれており、翠が巻き込まれる可能性も多分にあった。
 今年の五月、秋兄に見合い話があった。
 見合い自体はさして珍しくもなく、「あぁ、またか」とその程度のもの。
 しかし、その見合い話を持ちかけた人間は、秋兄の逆鱗に触れ時期外れの人事異動と相成った。
 その男、佐々木宗治(ささきむねはる)――本社の専務取締役というポストにいたが、今は小さな支店へ出向され、役付き取締役というポストからは異例の降格。
 付随して年俸もずいぶんと減ったことだろう。
 すべてはそこから始まっていた。
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