光のもとでⅠ
 藤山へと歩きだして数分経っても、俺たちの間に会話はなかった。
 こんな状態が珍しいかというとそうでもないわけだが、ここまで居心地が悪い、と感じることはかったと思う。
 この場の空気は翠と俺のどちらが作り出しているものなのか。
 どっちも、か……。
 翠は記憶が戻ってからというもの、ひたすら気まずそうにしているし、俺は俺で逃げられたことへの腹いせがないわけでもない。
 秋兄と同じラインに立つためには必要なことだったと思う。
 気持ちが通じたところですべてがうまくいくとは思っていなかった。
 けれど、やっぱり嬉しかったんだ。想いが通じたことが。
 嬉しかった……。
 そう思っているところ、急に手の平を返されたら誰だって面白くはないだろう。
 いかなる理由があろうとも。
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