光のもとでⅠ
 無言のまま庵を通り過ぎようとしたとき、
「ツカサ、おじいさんに声かけなくてもいいの?」
「許可ならあらかじめ取ってある。それを誰が自己都合でキャンセルしてくれたんだっけ?」
 視線だけを翠に向けると、翠はいたく申し訳ない顔をしていた。
 そして、「ごめん」と上目遣いで俺を見る。
「でも、ちゃんと連絡は入れたよ?」
「別にすっぽかされたとは言ってないけど?」
 翠は言葉に詰まった。
 つまり、ここのところ俺たちの会話はいつもこんなものばかりなわけで、そこは全面的に俺が悪いと思う。
 悪いとは思っていても改められないことを血が悪い――と俺は血のせいにして納得する。
 どうせうちは捻くれた人間が多い家系なんだ、とこんなときだけ「一族の血」をいいように使う。
 そんな自分は、やっぱりどこまでも藤宮の人間なのだろう。
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