光のもとでⅠ
 突如、
「っ……ごめんっ」
 視界が戻ったらしい翠が俺から離れようとした。
「っ……勝手に人の中に入ってきて、勝手に出ていくなっ――」
 今度こそ条件反射だった。
 身体の動きも放った言葉も何もかも。
 自分から離れる翠を直視できなくて――。
 何を掴んだのかは定かじゃない。
 ただ、目の前にある「翠」が離れないように必死だった。
 とはいえ、どんな言い分だ、とも思う。
 でも、もう遅い。遅いんだ――。
 翠を手放すことなどできない。
 つながりを絶つことなど考えられない。
 選択権など与えられない。
 格好悪い自分を見せることで得られるのなら、それでもいい――。
< 8,304 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop