光のもとでⅠ
「来れない人もいるけど、クラスメイトの半数は集まる予定。御園生は来れそう?」
「あ、うん。お母さんに訊いたら行っていいって言われた」
「じゃ、病院以外の予定一番のりってことで。ほら書いた書いた」
「うん」
 手帳に予定を書き込み顔を上げると、佐野くんがにっ、と笑った。
 佐野くんもお父さんと同じで、肌に夏の名残がある。そんな共通点に思わず頬が緩んだ。

 携帯事件のことやそのほかのこと。「臆病」が原因でタイミングを逃してしまうと、次に機会があってもなかなか話せない。その都度、どう切り出そう……と考えてしまう。タイミングをうかがって、気づいたときには固まっている。
 なんだか長縄跳びにみたい……。
 グルングルン、とテンポよく回る縄を跳ぶ長縄跳び。縄を回している人の脇からするりと入り、縄を跳んで出て行く八の字跳び。人が流れるように跳んでいく中、自分の順番が来ても迫り来る縄を前に足が竦み立ち止まる。一歩踏み出すのに勇気がいる。
 踏み出して跳んで出ていく――ただそれだけのことだけど、タイミングを間違えると途端に流れが止まってしまう。
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