光のもとでⅠ
「そこは昇降機になっていて、あとで地下から三人が上がってくる。真ん中の丸いのは発言台ってところかな。それと、これピンマイクね。今は外してていいけど、会計の読み上げのときにはコレつけて喋って?」
 小指くらいの大きさの、クリップつきの小型マイクを渡された。
「あの……もしかして、あの丸いところで読み上げるんですか?」
 引きつり笑いも作れないくらいに顔が固まる。
「通常はそうだけど、司に聞いてごらん」
 くる、と司先輩に向き直り訊こうとしたら、
「そこで座ってでいいから。真ん中で話して台の上で倒れられたら厄介」
 私が何を訊くまでもなく、素っ気無くそれだけを口にする。
「……それは特別扱い?」
 なんとなく心がざわりとした。
「生徒総会を滞りなく進めるための一方法。あそこで話さない分、目立たないんだ。しっかり声出して誰が話しているのかわかるように努力しろ。それができなかったら特別扱いとなんら変わらない」
 ……特別扱いされたくないなら、ここでがんばれっていうこと……?
 まじまじと司先輩の顔を見ると、「何」と一言返される。
「……先輩の意地悪は優しさの裏返しでなんだか難しいです」
 言うと、右隣の春日先輩が吹きだした。ワンテンポ遅れて美都先輩も吹きだす。
 笑われるようなことは言った覚えないのに……。
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