光のもとでⅠ
「これは今日お嬢さんに渡そうと思って持ってきたものじゃ」
「え……?」
「実はどちらでもかまわんのじゃ。本来ならパレスで渡す予定だったものでの」
 言いながら袂から出した手ぬぐいを見つめた。
 意味がわからなくて頭の中にクエスチョンマークがずらりと並ぶ。
「これは毎年五月にある藤の会の招待状代わりなんじゃ。面倒な人間も数多くいるが、お嬢さんが来るなら真白が喜ぶじゃろう。来てはくれぬかの?」
 私は朗元さんの目を見ながらじっと考える。
「お嬢さんがあの手の集まりが苦手なのはわかっておるつもりじゃ。苦手なものは回を重ねても慣れぬじゃろう。真白がそのいい例じゃ。あれは幼少の頃からあの手の会には何度も出ておる。じゃが、慣れることはなかった。それでも立場上出席せぬわけにはいかぬものが多々ある。……真白を助けると思って来てはくれぬかの?」
「……真白さんと一緒にいられるのなら」
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