光のもとでⅠ
「ごめんなさい。やっぱり先生には嘘つきたくなくて……」
「で?」
「何かはあるんです。でも、蒼兄と唯兄が時間が経てばわかるって教えてくれたから……。だから時間が経つのを待っています」
 ただ、時間が経つにつれてわかることと言えば、好きな気持ちが膨れていくことだけ。
 ツカサをどんどん好きになっていく。会うたびに、もっともっと好きになっていく。
 秋斗さんとツカサと同じように会って、同じように勉強を教えてもらっているのに、私はツカサだけを好きになっていく。
 秋斗さんのことを好きにならないということではない。秋斗さんとの時間も増えれば増えるほど、秋斗さんのことを知り親しみや信頼度が増す。でも――恋じゃない。
「答えは出そうなのか?」
「……答えは出るかもしれません。でも、私は何も変わらない……。そう決めたから」
「そうか……。ほらよ、最後の鍼も取った。今日の治療は終りだ」
「ありがとうございます」
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