光のもとでⅠ
「……過ぎたことを今言っても仕方ないけど、静脈に直接薬を入れてもこの状態。今以上に強い薬は使いたくないし分量も使いたくない。……正直、動いてほしくないわ」
「先生っ」
「わかってる……。点滴を一度外すから支度を済ませなさい。洋服着たらまた入れる。空港に着くまでは車内で点滴。いいわね」
「はい……」
 手早く身支度を済ませると、相馬先生がやってきた。
「おら、これだけは飲んでいけ。姫さんもな」
 相馬先生がトレイに乗せて持ってきたのはスープだった。
「ジャガイモのポタージュだ。身体はあったまるしカロリーもそこそこ。胃にも優しいぜ」
「ありがとうございます」
 私が受け取ると、湊先生は「毒、入ってないでしょうね?」と相馬先生をじとりと見上げる。まるで胡散臭いものを見るかの眼差しで。
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