光のもとでⅠ
「彼女の大好きな陶芸作家、朗元は俺たちのじーさんだ……。しかも、彼女が白野のパレスへ行ったとき、彼女の胸の内を聞いた人物でもある。極限まで追い詰められていた彼女の心を聞き出したのは、彼女が気持ちを吐き出せたのはうちのじーさんなんだ」
「っ……ちょっと待って、何それ……。俺、聞いてないっ」
「白野で俺は彼女に会ってない。司も来ていたけど会ってはいない。……彼女に会って、彼女の心を吐き出させたのはじーさんだ」
「そんな……。リィは藤宮の会長と知らずに会ってるってことですかっ!?」
「そう……」
 じーさんは事前に自分が会長であることを彼女に伝えはしないだろう。だが、確実に正体がばれる日が近づいていた。
「くっそ……ほんっとーに俺、会長って大嫌いだっ」
 唯は食べ終えた器を持ってキッチンに入ると、ガチャガチャと大きな音を立てて、八つ当たりするみたいに食器を洗い始めた。
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