光のもとでⅠ
 ――自分を大切にしてほしい。決して、自分の気持ちを踏みにじって、自ら己を傷つけないでほしい……。
 司――俺の一言で彼女は楽になれるんじゃないか?
 どうしてそうさせてくれない……。
 お前は選ばれることに意味があると言うけど、その気持ちはわからなくはないが……。むごすぎる――。

 初等部の並木道は高等部と比べると格段に短い。きっと五十メートルほど。
 その間、視界に映るものを話の題材に、彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩いた。
 ――司、一言だけ言わせてほしい。
 身を引くなというのなら引かずにいよう。選ばれることに意味があると言うのなら、彼女がそう動けるように背中を押させてくれ。そのための一言くらいは許してくれ。
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