光のもとでⅠ
 食洗機にお弁当箱を入れると、
「お茶の用意ができてるからティータイムにしましょう。今日はチーズケーキを焼いたのよ。で、翠葉ちゃんはそのあと少し休みなさい」
「はい」
 リビングでは珍しく曲が流れていた。
「……間宮さんのピアノ」
「今日は静兄様のお母様、静香さんの命日なのよ」
「……そうなんですか?」
 ラグに座り、ソファに座った栞さんを見るとコクリと頷いた。栞さんは外を見て、
「晴れていて良かったわ。今日は静兄様ひとりでお墓参りに行っているから」
 お墓参り……。
 私はまだ近しい人の死というものを体験したことがない。
 だから、お墓にはご先祖様しかいなくて、誰か知っている人を弔うためのものではなかった。
 近しい人――自分が大好きな人がこの世からいなくなるというのはどんな感じなのだろう。
 少し考えるだけでも怖い……。
 もし、突然大地震が起きたとして、家族の安否がわかるまでにどれくらいの時間を要するのだろうか。家族に会えるまで、どれくらいの時間がかかるのだろうか……。
 以前、そんなことを延々と考えていた時期がある。
 今は、家族だけではなく友達も――ほかにもたくさん失いたくない人たちがいる。
 でも、すでに誰かを失っていて、毎年毎年やってくる命日を迎えるのはどんな気持ちなのか……。
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