光のもとでⅠ
「父はね、私の母を気遣ってお墓参りには行かないのよね」
「……お父さん?」
「そう、静兄様と私のお父様。でも、それでは静香さんがかわいそうだわ……」
 確かに、間宮さんがかわいそうだ……。
「母はね、毎月月命日にお墓参りに行くのよ。そして、命日の月だけは行かないの。……静兄様が静香さんとお話しをしたいだろうからって」
 柊子先生らしい……。
 まだ数回しかお会いしたことはないけれど、とても物腰穏やかな先生だ。
 人の話の腰を折るようなことは絶対にしないし、行動を止めることも、咎めることもなさらない。
 作法でも間違えた行動をそのまま見ていらっしゃる。
 そして、正しいことを教える前に必ず訊かれるのだ。
「どうして今の行動を取ったのか」と。
 所作は人の心だと仰る先生ならではの質問。
 それに答えが伴えば、正しくはなくても間違いでもないと仰ってくださる。
 人の気持ちをそっと両手で掬い上げてくれるような、そんな優しさとたおやかさを持っている人。
 しなやかで強い――私もそんな人になりたい。
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