光のもとでⅠ
 病院は年末休業に入っており、一階のフロアはガランとしていた。照明もエレベーターまでの通路にしかついておらず薄暗い。
 たくさんの椅子が並ぶ片隅に人影を見つけた。後ろ姿だけで蒼樹さんと確信する。
 足早に駆け寄り、逸る気持ちを抑えて声をかけた。
「蒼樹さん」
 憔悴しきった表情がこちらを向いた。
「翠葉、どうしたんですか? 手術って、なんの話ですか? まさか、悩み抱えすぎて胃潰瘍とか……?」
 でも、それにしては蒼樹さんの落胆が激しすぎる。
「……走ったんだ」
「え……?」
「ただでさえ体調が良くなくて、普通に歩くだけでも呼吸が乱れる状態だったところを、走ったんだ……」
「そんな……。じゃ、手術って――」
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