光のもとでⅠ
 俺は無言で頷き、
「これから静さんに連絡してヘリの待機もお願いする予定」
「あぁ、晴れて義兄になったことだし甘えるといい」
 書斎をあとにし、すぐ静さんに連絡を入れた。
 静さんは何を訊くでもなく、ヘリを待機させておくと約束してくれた。


 * * *


 今日がタイムリミット。一通り補習を終え、帰り際に話を切り出すつもりでいた。すると、
「秋斗さん……元気、かな」
 ここにきて、翠に話を振られた。
「……さぁ。気になるなら自分で訊けば? ここ、携帯使えるわけだし」
 サイドテーブルに置いてある携帯を取り手渡す。つながらないことを知りながら。
 携帯が通じない、と一言言ってもらえたなら少し違う対応ができたかもしれない。けれど、翠はそうは言わなかった。
 ただ、「そうだね……」と視線を落とすのみだった。
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