光のもとでⅠ
「先輩、あの部屋のデザインやります。タダで」
「え?」
「この間のお礼です」
「じゃ、お言葉に甘えて。でも、今さら返事? こんなの描き始めておいて」
 笑われたけれど、先輩は設計に関しては詳しくないからこの図を見ただけではわからないのだろう。
 広さ的には仕事部屋の方が少し広い。
 メインは翠葉の部屋だけど、それに手を加え直したものを提案してみよう。
 全力で翠葉の部屋を作るのだから、却下されるつもりはない。
「先輩、カフェに行きませんか?」

 場所をカフェに移し、先輩の意向を聞きつつ昼ご飯を食べていた。
 食後のコーヒーを飲んでいると、覚えのある甘い香水の香りが漂ってきた。
 そちらを振り向くと、俺の彼女、という人間が立っていた。
「この五日間連絡なしってどういうことっ?」
 同席している人間がいるにも関わらず、前置きなしに切り出される。
「あぁ、ちょっとバタバタしてて連絡する余裕がなかったんだ」
 正直に話すと、険しい顔が一層険しくなり、眉が釣り上がる。
 その顔を見て思う。かわいくないな、と。
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