銀棺の一角獣
「……西の方向なら進めそうです」


 やがて戻ってきた二人は、ミラールに告げる。


「ひとまずは西――か」


 ミラールはティレルに視線を投げた。


「かまわん。一度西に進もう」


 ミラールはルドヴィクを呼んだ。


「今度はお前が先に行け――アルティナ様をしっかりお守りするんだぞ」


 言葉の後半は小声で告げる。相手の表情をうかがうことのできない闇の中、ルドヴィクはミラールにむかってしっかりと頷いて見せた。彼の意図はわかっていると伝えるかのように。

 今度はルドヴィクが先頭に立ち、アルティナを導くようにして先を急ぐ。


「……おかしいな」


 ティレルがつぶやいた。


「なぜ、西の方にだけ兵がいないんだ?」


 ティレルの足がゆっくりとなり――やがて止まってしまう。


「――馬を止めろ!」


 ティレルがルドヴィクに声をかけた。ルドヴィクは馬を止めて振り返る。
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