銀棺の一角獣
 最初は、兄の守り役として宮中に上がった少年たちのうちの一人だった。自分より少し年上の、頼れる相手。

 それが恋心に変わったのはいつなのだろうかなんて、もうわからない。心が通じ合ったのは嬉しかったけれど、彼はアルティナとは言葉をかわすだけで満足なのだと笑っていた。

 手を握ったり、抱きしめたりしてくれるようになったのは――父と兄を失ってからのこと。

 わずかな触れ合いにどれだけ慰められたことか。それだって、アルティナが夫を迎えればなくなってしまう。


「……あなたを、愛しているの……」


 自分だけに聞こえるよう、ごく低い声でアルティナはつぶやいた。もう一度、下にいるルドヴィクに手を振る。

 それからまっすぐに寝室に戻ると、窓を閉じた。
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