銀棺の一角獣
「アルティナ、その剣で俺を切れ」

「……なんですって?」


 驚きの悲鳴とともに、アルティナは手にした剣を落としそうになる。
 この剣で、ティレルを切る。
 そんなことなんてできるはずがない。


「何で? どうして? なぜ、あなたを切らなければならないの?」


 アルティナの目の縁に涙の粒が現れる。それは、静かに睫をつたって、こぼれ落ちた。


「……アルティナ……頼む。必要なことなんだ」

「どうして? 必要なことなんて言わないで。ここであなたを切るなんてできるはずないでしょう?」


 訳を教えるようにと、アルティナはティレルにつめよる。生きているものを切ったことなんてない。自分にそれをやりとげられる自信もなかった。


「理由を説明する」


 ティレルはアルティナに鼻をすり寄せる。甘えているかのように。


「……このままでは、俺はあいつに勝つことができない。千年寝休んである程度回復したとはいえ、身体も精神も手ひどい傷を負っているからな。全回復というわけにはいかない」

「だから……?」
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