銀棺の一角獣
 部屋の隅には、瞳の色に合わせた紫色のドレスが下げられていた。

 胸元はそれほど広く開けられてはいないが、何重にも重ねられたレースが華やかな雰囲気だ。

 スカートはふわりと広がっていた。裾は長く後ろに引いている。

 金と銀を組み合わせた繊細な作りの首飾りに、揃いの耳飾り。ティアラも同じ職人の手によるものだ。


「素敵なドレスですねぇ……」


 皺を伸ばしながら、うっとりとケイシーが言った。


「ありがとう」

「アルティナ様にお似合いですよ。本当に綺麗」


 ケイシーは一度ドレスを下ろした。それから的確な手つきで皺を伸ばすと、再び壁にかける。

 その頃には、アルティナも軽食を食べ終えていた。


「そろそろお支度を始めましょうか?」


 ケイシーにたずねられて、アルティナはうなずく。

 ケイシーは優秀な侍女だった。アルティナの髪を結い上げ、化粧を施し、ドレスに身を包むまでてきぱきと手伝ってくれる。

 身支度が終わる頃には、アルティナの気分も落ち着いていた。

 大丈夫、何とか儀式が終わるまで耐えきってみせる。
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