銀棺の一角獣
「行くわ! わたし――これ以上あの方の好きにさせるわけには――」

「待て」


 ティレルの押しとどめる声も、アルティナには聞こえていなかった。アルティナは、ティレルの背に強引によじ登ると


「早く!」


 と彼の耳元で喚く。


「アルティナ! 下りろ!」

「イヤよ! 行くの? 行かないの?」


 激高したアルティナはティレルの耳元で喚くのをやめなかった。大声を上げ、鬣をひっぱり――観念したようにティレルは首をふる。


「わかった。――おまえを無事に連れ戻すのは至難の業になりそうだがな!」


 しかたなさそうに言って、ティレルは全身に力をこめた。


「どうなっても知らないからな! 行くぞ」


 ティレルの声にアルティナが同意すると、ティレルはそのまま城壁から無造作なほどの勢いで飛び降りた。
< 276 / 381 >

この作品をシェア

pagetop