銀棺の一角獣
 こんなところにアルティナがやってくるなんて無謀だ。無謀以外の何物でもない。

 無言でライオールが振り下ろした剣を、ルドヴィクは大きく横に飛んでかわした。


「まったく――ルドヴィク、おまえ一人でどうにかできると踏んでいたんだがな」


 これが人間なら、不満げに唇をねじ曲げたような表情になるのだろう。そう言ったティレルの背からアルティナはライオールを見つめる。

 ――最後に会った時よりだいぶやつれた。


 それが最初の印象だった。最初に顔を合わせた時は、覇王とでも呼びたいような空気を背負っていたのに。


「――あなたは――帰るべきよ。自分があるべき場所へ」


 アルティナが語りかけているのはライオールではなかった。彼の心を蝕んだ者へ語りかける。
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