銀棺の一角獣
「そういえば、キーラン様ですけどね」


 ケイシーはアルティナの方へ身を寄せた。


「あっちこっちの貴族からお嬢さんを押しつけられて、毎日大変そうですよ! それも当然ですよねー、今回一番大きな手柄をたてたんですもの。以前はお兄様方の陰にかくれてしまっていましたけれど――」


 ケイシーの率直すぎる口調は、アルティナにとって心地いいものだった。

 ディレイニー国で過ごした不安な日々、アルティナを慰めてくれたのはケイシーの明るさだった。


「前はお嬢様方も見向きもしないというか――お兄様方狙いだったんですけどね。もう舞踏会だの昼食会だのあっちこっちに呼ばれて毎日忙しそうですよ」

「そう……それならいいわ」


 婚約を破棄した今、キーランとアルティナは友人という関係でしかない。けれど、そこには確かに優しい感情があって、国に帰ったキーランが認められつつあるというのが嬉しかった。
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