銀棺の一角獣
「……それを、今おたずねになるのですか?」


 ルドヴィクが困った顔になる。それでわかってしまった。彼もあの時、あらかじめ知らされていたのだと――きっとそうでなかったら、ライオールの隙をつくことはできなかっただろう。

 わかっても、気持ちはついていかない――三年も前のことだけれど。


「あれはどうしようもなかったのですよ――万が一の時の手だときいていましたし」


 唇をとがらせたアルティナの顔を困ったようにルドヴィクはのぞき込む。


「今、キスしてくれたら許してあげる」

「今……ですか?」

「そう。今、ここで。だって、皆期待しているもの――」


 しかたのない人ですね、と唇を動かしてルドヴィクはアルティナを引き寄せる。

 祝福の声がいっそう高くなった。


 【完】
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