銀棺の一角獣
「それがわかればな。父上を止めることができるのだろうけれど」

「……すみません」

「いや、いいよ」


 キーランは苦く笑った。


「とりあえず父上は、君を殺す意志はなくなったらしい。というより、あの時も脅そうとしていたような気がする――牢に放り込んだままほうっておいたのもね」

「そうでしょうか……?」


 あの時のライオールは、殺気をみなぎらせていたと思うのだけれど――


「僕の預かりってことで、この部屋にいてもらうことにした。申し訳ないけれど、部屋の外にも、庭にも兵士が控えている。逃げられたら困るから」

「……逃げませんわ」


 逃げることなんてできない。逃げたところで、どこに行ったらいいのかもわからない。それに騎士たちを残して自分一人だなんて考えられない。


「わかってる。表向きはそうなっているってことを認識しておいて。ところで、君に頼みがあるのだけれど――いや、頼みと言うより君が動いてくれないとどうにもならない、という感じかな」


 にこりとして、キーランはアルティナに手を差し出した。
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