サファイヤアンドロイドの夢
ある日、その感情は、唐突に彼の心の中に浮かんだ、と言う。
本人がそう、警察に供述している。
ある日、不意にそう思ったのだそうだ。

二人がそう、何よりも愛してきた妻と息子が、肉体関係を伴う近親相姦の間柄にあると。
博士は、その考えに至った日に、自らの家に火を放ち、愛する妻と息子ともども焼き尽くし、行方を暗ませた。

博士は、山奥の廃工場を改装し、自分のラボと、その地下に秘密の住居を構えた。
そうして3年と言う月日をかけて、2体のアンドロイドを作り出した。
妻と息子を象り、今の科学力では不可能だと言われてきた再生能力を持つ人工皮膚を纏ったアンドロイドを。

私は2年もの間、自分を人間だと信じて暮らしていた。

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