サファイヤアンドロイドの夢
そのまま答えずにドアを閉める。
ドア越しに男が遠ざかっていく足音が聞こえる。
私の為に歩いた、だと?

違う、おまえの為だ。


ライラはおまえの為に歩いたんだ。
確かにお前は言ったのだろう。
ジェイルが心配しているから、ジェイルの為に歩いてやれ、と。そうしてその言葉に、ライラは素直に頷いただろう。
だが違う。
ライラが歩いたのはおまえの為だ。
おまえの喜ぶ顔が見たいからだ。私には痛いほどライラの気持ちがわかると言うのに、肝心のおまえがなぜわからない。

そうだ。私はMr.Dが笑ってくれるのなら、それこそ何でもしただろう。
両足を失っただけでそれが得られると言うのなら、喜んで差し出しただろう。

なぜわからない、おまえは。

なぜ、そんなところまで似ているのだ。
彼に、
Mr.Dに。
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