サファイヤアンドロイドの夢
私はそっと起き上がり、ドアを開け、廊下を覗く。今のが夢でないのなら、男が廊下で誰かと口論をしていなければならないからだ。
だが、誰もいない。
誰かがいた気配もない。
では、やはり夢か?
何と言っていた?国連が決定を下した……例の件……。

足音だ。
廊下の向こうから誰かが走って来る。
私はそれが、誰だかわかるような気がする。
だがそれは、今のが夢ではないと言う証拠だ。
遠目に目が合う。
私がドアの前に立っているとは思わなかったのだろう。男は、足を止めた。
男の顔が泣き笑いのように歪む。
私はそのまま踵を返し、ドアを閉める。
男を拒絶する為に。
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