KISS

距離、か…。


距離が離れたら、気持ちも離れるとは限らない。


だけど、気持ちが離れないとも限らない。


不安になる気持ちの方が、あたしは分かるよ。


…そもそも、考えてみたこともなかったから。


巧は気がつけばいつも傍にいたから。


巧がいなかったことなんてなかったから。


だから、あたしも巧と離れてしまったらどうなるか分からない。


「巧」


「ん?」


歩めていた足を止め、少し下を向いてあたしに視線をあわす。


その仕種がたまらなく好きってこと、もちろん巧は知らないわけで。


こんなにも愛しいと思う人の手を、離せる日なんて来るのだろうか。
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