夏の君を
高校三年生の夏―――



蝉が鳴き始めたグランドには、今日も球児達が集まる。



あたし、柳井アカリは、この高校の野球部のマネージャーなどではない。



…ただの見物人だ。




｢今日も暑いなー柳井。｣



毎日熱心に練習を見ているあたしに見かねて、野球部の顧問である浅倉先生はいつの間にか自分の椅子の横にあたしの椅子を用意してくれたのだ。


｢暑いですね。｣


小さい頃からお父さんと、隣の家の恭弥と一緒に夏になるたび甲子園を見ていたため、無駄に野球知識があるあたしを、浅倉先生は何度もマネージャーに誘った。


しかしあたしはマネージャーにはならなかった。






この高校の野球部には、『部員とマネージャーは恋仲になってはならない』という鉄則があるからである。
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