夏の君を
「アカリ、お前あのチームが甲子園に行ったらベンチでスコア書くって本当か?」



帰り道。
今日は一人多い。


「うん。頼まれた。」


「あれな、断ったからな。」


え…?


あたしより先に、恭弥が反応してた。


「なんでですか?」


「なんでってお前、アカリは部外者だぞ?」



部外者がベンチに座ってスコアを書く。


確かにおかしい。

そう、あたしはマネージャーでも部員でもなんでもない。





…ただの見物人。




アルプススタンドで十分なんだ。



そう思うと、なんか悔しくて、悲しくて、なんでマネージャーやらなかったんだろうって今さら後悔する。



「うん。わかった。」




ベンチに入れるなんて、夢のまた夢。



あたしの目的は恭弥が甲子園に行くこと。



それだけ。
< 23 / 54 >

この作品をシェア

pagetop