『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
8 探り合い
≪葵side≫
金曜日の夕方。
いつも通り夕食の用意をしていると、
「葵ちゃん、葵ちゃん!!」
「はい?」
リビングの入口から楓さんが呼んでいる。
……何だろう?
手にしている玉ねぎを一先ず置いて、
「どうかされたんですか?」
「ん?ちょっと頼み事があって…」
「頼み事?」
「うん、ちょっと部屋にいいかなぁ?」
「……はい」
私は楓さんの後を追ってアトリエへ。
今日は午前中で急ぎの仕事を終えたらしく、
午後からアシスタントさん達はお休み。
「そこ、座って?」
「はい」
ソファへ腰かけると、
楓さんが1冊のファイルをテーブルに置いた。
「あのね?明日から1泊で温泉の取材が入ってたんだけど…」
「……はい」
「で、準備してたら急な仕事が入っちゃって…」
「え?」
「でね?」
楓さんは笑顔で私をじーっと見つめて…