『恋人代行 』 ① 媚薬の口づけ
葵の白い肌にくっきり紅い薔薇を咲かせ、指でなぞる。
視線の先のアイツは、
フルフルと握り拳を作ったまま立ち尽くしている。
けれど、俺らの方へ来る気配は無い。
ただ立ち尽くしてるだけ。
俺は葵のブラウスのボタンを1つ外した。
完全に寄ってる葵は気づいていない。
アイツの視線を感じながら…
俺は葵の鎖骨の下に
もう1つ紅い薔薇を咲かせた。
アイツは相当我慢している様子。
顔が凄まじく歪んでいた。
もはや“イケメン”では無いくらいに。
上出来だな…。
今日はこれくらいにしとくか。
「葵?そろそろ帰るか?」
「うん」
俺は葵を抱え、精算し店を出た。
振り返るが追いかけて来る気配は無い。
マジで中途半端な男だな。
普通、握り拳を作ってまで立ち上がったなら、“俺の女を返せよ”くらい言って来るもんだろ。
まぁ、実際ここで追いかけて来られても困るけど。
俺は酔い醒ましに少し歩いて…
葵を家まで送り届けた。