レベッカ
「な……に、」
顔を上げると、ロイの顔が、すぐそばにあった。
覗き込むように細められた目に、一瞬、動きを奪われる。
驚いて、体を反らした。
ロイは、一度目を伏せてから、アレンを見て、言った。
「嫌?」
アレンは、動揺したまま、聞き返す。
「嫌……て、いうか、なんで?」
「んー……愛情表現?」
「は? え?」
「他になにがあんの」
当然のような顔をして、ロイは言う。
アレンの口からは、意味のわからない音が溢れ出てきていた。
「え……あ、や、あたしに? レベッカは?」
「……なんでここでレベッカが出てくんの?」
訝しげな顔をしたロイに、アレンは混乱する。
なにか食い違っているような、とにかく、お互いに前提がずれているみたいだ。
「だって、ロイって、レベッカのこと」
最後まで言わずに、だよね?と、目で問いかける。
「……バレてたの」
ロイは苦い顔をして、頭を掻こうと腕を上げて、不意に痛みに呻いた。
脇腹に走る激痛に、上げた腕も下がらないらしい。