レベッカ



気を失ったアレンを背中に庇って、部屋に火が上がるのを見ながら、迷ったのだ。

どちらを先に外に出すかでも、どちらを選ぶかでもない。
アレンを外に出したあと、レベッカを連れに戻ってくるかどうか、だった。

あそこであんたの手を離すなんて、考えらんなかった。

そうロイが呟くと、アレンは振り返って、眉尻を下げた。


「……その……全然、知らなくて、」
「だろうね。レベッカは気付いてたってよ」
「え、そう、なの」


声を裏返しそうなほど狼狽えるアレンに、ロイは言い募る。


「バレバレだってさ。俺はそんなつもりなかったんだけど。二人で話してた時にいきなり、ロイってアレンのこと」
「いやいい言わなくていい」


うろうろと目を泳がせるアレンの真っ赤になった顔を、ロイが笑う。
すぐに唇を尖らせた彼女の耳元に、ロイは近付いた。





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