アカイトリ
邂逅
わたしは朱い鳥。

数千年を生きて、長い間を、空を我が物として悠然と、超然として羽ばたいていた。


わたしたちの声は、魅了の声。

わたしたちの姿は、秀麗にして神から与えられた、朱く朱い姿。


故に、人間どもから鑑賞目的で狩られ、同朋の数は激減した。


憎い

人間が、憎い。


わたしは独りになってしまって、

わたしは同朋の姿を捜して放浪し続けているのだ。


人間どもがなぜわたしたちを狩ろうとするのか、もうひとつ理由がある。



わたしたちが


夜になると



人間の姿に変化するからだ。



神から愛され、そして呪われた我が朱い一族…

理由は今は話したくはない。

けれど

わたしが今こんなにも必死に人間どもの手から逃げているのは…



神よ、お前のせいだ。



――朱い鳥は弓矢で傷ついた右羽をひきずりながら逃げ続けた。



闇夜が深い。

たった数時間でも人間の姿になるなど、耐えられない…!


あの悪辣な人間どもに捕らえられてしまえば、どこかに居るかもしれない仲間に会えなくなるのだ。


動け



動け…!



「なんだこの鳥は…」



――ふいに左の林から松明の明かりを燈され、朱い鳥警戒もあらわに、男に向かって真っ赤な羽を大きく広げた。


顔がよく見えない。


しばらく睨み合っていると、身体が淡く発光し始めた。


いけない…!


わたしは、もう終わりだ…


ああ、同朋よ…


逃げろ。


生きてもなお見世物になる位なら、自ら命を絶ってやる…!



――鳥から人に変化した朱い鳥を見て男が絶句していた。


その隙に男に走り寄り、腰から下げた刀を鞘から抜いて首筋にあてた。


「おい、よせ!」


お前などには捕まらない。



誇り高く、気高いままで死んでやる――

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