アカイトリ

颯太と天花

男…颯太(ソウタ)は目の前で朱い鳥が人になり、自らの剣を一瞬で奪われ、首筋にあてた女の手から剣を奪い取った。


「人妖か…?」


いや、伝え聞いたことがある。


――これは、朱い鳥だ。


種は既に絶滅したとされる、幻の鳥だ。


まさか…生き残りが居たとは…。


…颯太は、なおも剣を奪おうとする女を観察した。


朱い髪。


朱い瞳。


肌は透ける程に白く、唇は紅を引いたかのように朱い。



「お前、朱い鳥だな?」



尋ねると、女は朱い瞳でぎらりと睨んで、呪うように呟いた。



「……殺せ」



…人の言葉も話せるか。


この森へは、単に最近口説き落とした女の館への近道だったのだが…


朱い鳥か。

夜になると人へ変化し、その姿は絶世の美女であると言われていた。


なるほど、その通りだ。

たいそう、美しい。



「楓(カエデ)」


どこからか小さく応える声が聞こえ、女の首に手刀が振り下ろされると、天花は言葉もなく楓の腕に抱かれる。


「颯太様…どうなさるので?」


「連れ帰るぞ」


幻の種ゆえに、人に愛でられ、なぶられ、時に孕む事もあると言う。



「俺が飼ってやる」



あの口説き落とした女主人には悪いが、朱い鳥などには早々お目にかかれない。


颯太は楓が引いてきた馬にまたがると駆け出した。
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