アカイトリ

嫉妬の行方とは

いらいら…

むかむか…


はらわたが煮えくりかえりそうだ。


――夜が明け、楓は凪の行いに対し、嫉妬心を隠せないでいた。


「颯太様の唇を奪うとは…!!」


常識はずれな凪の行動でまたしても及び腰になってしまった。


「だが、颯太様は笑ってらした…。…俺が同じことをしても、あの方は許してくださるのだろうか?」


無心になるために道場で剣を振っていたのに、完全に煩悩に負けてしまっている。


――汗が飛び散り、楓は休憩を挟んで顔を洗いに井戸へ向かった。


朱い鳥はあの後凪が去った後に現れ、謎の方法で颯太の処置にあたった。


それがどんな方法だかは知らないが…


二晩続けて、淫らな朱い鳥の喘ぎ声が聞こえた。


それを聞くのも耐えられないのに、次は黒い鳥ときた。


颯太の命を奪おうとした邪悪な塊。

今後手を出すことはないと分かっていても、この手で判別がつかないほどにばらばらにしてやりたいのに…


――ふと颯太の部屋を見遣ると、颯太がちょうど部屋から出てきて陽射しを浴びていた。


眩しそうに空を見上げながら光を遮る手。

美しく煌めく金色の髪。


「そう…」


声をかけようとした時、ひらりと屋根を伝いつつ凪がやって来る。


遠目にだが、確実に泣きそうな顔を垣間見せた黒い鳥の子。


そのまま颯太の隣に居座ると、べたべたと顔や髪に触れている。


「…許さんぞ」


不可触の存在に触れることは、許さない。


――ずかずかと二人の前に現れ、主の失礼にならないように距離を保って立った。


「よう、狂犬」


「気安く話しかけるな」


努めて冷静に放った言葉に、颯太が興味津々な表情をのぞかせている。


「珍しいな、楓。お前が他人に絡むとは」


「私はこいつを絶対に許すわけにはいかないんです」


それをやはり興味津々な様子で見ていた凪が、再びべたべたと颯太の髪や腕に触れた。


「貴様…!」


「あ?……はーん…そういうこと?」


何かを悟った風情で凪が何度も頷き、颯太の頬に触れながら楓を挑発した。


「おい、颯太。飼い犬に噛まれんように気をつけないとな」


「…!!」


殺してやりたい…!


――楓は心の内にそれを押し込めた。
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