アカイトリ
「…いつになく今夜のお前は素直で可愛いな」


ひとしきり唇を重ね合った後、天花の朱い髪を指先で梳いて感触を楽しむ。


「きっとさっき飲まされたやつのせいだ。こんなのは、わたしじゃない」


――素直な気持ちを吐き出す事が苦手だ。

というか、話し相手すら今まで居なかった。

だから、こうして憎き人間と話をしていることに自分自身驚いている。


「いや…お前は、半分人だったな…」


「何だ急に。俺が半分人間だと?半分どころか…碧い鳥の末裔であることを証明するのは、この藍色の瞳と胸の鉤爪の刻印だけだ」



――そう言って酒を口に運ぼうとすると、天花にそれを取り上げられ、一気に飲み干された。


「おいおい…」


「碧は…たいそう美しかったことだろう。お前を見ていればわかる。他の色の鳥たちが羨むほどに、熱心に愛されたはずだ」


「なんだ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」


「人を知らないが、お前が特別なのはわかる。お前は美しい」


再び目がとろんとしだす天花を、万感の思いで颯太は優しく押し倒した。



「…天花、次の段階に進んでみたくはないか?」


「何だ、次の段階とは…?」


「いや、だから…」


天花の浴衣の帯に手をかけようとした時――


すう。


安らかな寝息が聞こえた。



帯から天花に視線を戻す。


完全に、寝入っている。


がくっと思わずうなだれ、身体を起こした。



「…参ったな。いつになったら俺を受け入れてくれるんだ?」



まあいいか。

生きる時間は短いが、少なくとも、態度を軟化させつつある天花には満足している。


時たま見せる花開くような笑顔にどれだけ癒されていることか。


――しかし、おあずけを食った犬状態…負け犬でいる気はない。


天花を抱き抱え、布団に寝かしつけた後、颯太は天花の首筋を強く吸った。


赤く鮮やかな痕が残る。


「今日はこれで勘弁してやる。次からは絶対に飲ませないからな」


そして颯太はそのまま同じ布団で床についた。
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