アカイトリ
医者と、颯太の父である隼人が同時に到着した。
「…颯太は?」
隼人に呼びかけられ、楓は颯太の部屋を目線で促す。
「今、朱い鳥が中に…」
藍色の髪を揺らし、そちらを見ると、隼人は歩き出した。
右手には、小さな小箱を持っている。
「隼人様、それは…」
「楓、控えなさい」
背後から肩を掴まれ、振り返ると、楓の父である疾風(ハヤテ)が無言で首を振る。
隼人が神の鳥を探して世界を旅する間、ずっと隼人の身を守り続けた父。
「父上、ですが颯太様が・・・」
「朱い鳥が傍に居るのならば心配ない」
やけに強く断言されて楓は戸惑った。
初老の疾風は再び慰めるように楓の肩を抱く。
「そう簡単には死なん。颯太様は碧い鳥の末裔だ。傷の治りは人間なみでも、生命力は強い。それに、神の鳥には癒しの力があるからな」
疾風はなおその場を動こうとしない楓の肩を押して、歩き出した。
――隼人は颯太の部屋の障子を開けた。
朱い髪の、朱い瞳をした絶世の美女が、颯太の身体に唇を這わせている。
「あれが癒しの方法か」
…碧の遺した書物にも、その方法が書かれていた。
では目の前の女は、確実に朱い鳥なわけだ。
「朱い鳥よ」
呼びかけると、顔を上げた。
口の回りが颯太の血で真っ赤に染まっている。
その姿が、異常に美しい。
「私は颯太の父だ。つまり碧い鳥の血族の現当主だよ」
――優しく言い、天花の真向かいに座り、颯太の顔を覗き込んだ。
顔は時々苦痛に歪んでいたが、明らかに傷口が塞がりかけている。
今でこれなら、実際受けた傷は相当酷かったに違いない。
「颯太の、父…」
「そうだよ。さあ、これを傷口に塗ってやりなさい」
手渡した小箱を天花が開ける。
中身は塗り薬だ。
「碧が処方した、特別な塗り薬だ。お前の唾液とも相成って、息子の傷はすぐに塞がるだろう」
「たす、かるか…?」
ああ、と強く頷いた隼人を見て、天花は再び颯太の顔を覗きこむと、安心したように微笑した。
「…颯太は?」
隼人に呼びかけられ、楓は颯太の部屋を目線で促す。
「今、朱い鳥が中に…」
藍色の髪を揺らし、そちらを見ると、隼人は歩き出した。
右手には、小さな小箱を持っている。
「隼人様、それは…」
「楓、控えなさい」
背後から肩を掴まれ、振り返ると、楓の父である疾風(ハヤテ)が無言で首を振る。
隼人が神の鳥を探して世界を旅する間、ずっと隼人の身を守り続けた父。
「父上、ですが颯太様が・・・」
「朱い鳥が傍に居るのならば心配ない」
やけに強く断言されて楓は戸惑った。
初老の疾風は再び慰めるように楓の肩を抱く。
「そう簡単には死なん。颯太様は碧い鳥の末裔だ。傷の治りは人間なみでも、生命力は強い。それに、神の鳥には癒しの力があるからな」
疾風はなおその場を動こうとしない楓の肩を押して、歩き出した。
――隼人は颯太の部屋の障子を開けた。
朱い髪の、朱い瞳をした絶世の美女が、颯太の身体に唇を這わせている。
「あれが癒しの方法か」
…碧の遺した書物にも、その方法が書かれていた。
では目の前の女は、確実に朱い鳥なわけだ。
「朱い鳥よ」
呼びかけると、顔を上げた。
口の回りが颯太の血で真っ赤に染まっている。
その姿が、異常に美しい。
「私は颯太の父だ。つまり碧い鳥の血族の現当主だよ」
――優しく言い、天花の真向かいに座り、颯太の顔を覗き込んだ。
顔は時々苦痛に歪んでいたが、明らかに傷口が塞がりかけている。
今でこれなら、実際受けた傷は相当酷かったに違いない。
「颯太の、父…」
「そうだよ。さあ、これを傷口に塗ってやりなさい」
手渡した小箱を天花が開ける。
中身は塗り薬だ。
「碧が処方した、特別な塗り薬だ。お前の唾液とも相成って、息子の傷はすぐに塞がるだろう」
「たす、かるか…?」
ああ、と強く頷いた隼人を見て、天花は再び颯太の顔を覗きこむと、安心したように微笑した。